脱出のためのロケットは完成したが、問題は誰が乗るかということだった。乗ることができるのはたったの十人。
そのうち二人は、ロケットの生産に出資した富豪にあらかじめ割り当てられていた。一番のお金持ちと、二番目のお金持ちだ。
また、ロケットの操縦を行うパイロットと、整備を担当するエンジニアも必須だった。これで四枠が埋まった。
国会では連日深夜まで割り当てについての議論が続き、政治家たちは政治家二人がロケットに搭乗することを決めた。
富豪、エンジニア、政治家で占められた六人を振り返ると、全員が老人であった。宇宙の長い旅では人生経験が求められる、子供は足手まといとなる、というのが理由である。しかし多くの批判を受けて、二人の若者が特別に搭乗を許されることになった。若者たちはエッセイで審査をされることになり、この困難な時代において希望と夢を持ち続けることについて、キラキラした見事なエッセイを書いた者が選抜された。実際のところ、そうして選ばれた若者二人はどちらも医者の卵であった。
最後の二人はマイノリティ枠となった。病気に苦しむ人が、困難に立ち向かう勇敢さを称えられて、ロケットに乗ることとなった。後で分かったことだが、二人とも搭乗する老人たちと仲の良い老人であった。
そうして十人が乗ったロケットは地球に別れを告げた。残されたすべての人達は、不毛の地となった地球で静かな終わりを迎えるのだ。それにしても、と遠ざかるロケットを見上げながら私は思った。あの人達は男ばかりでどうするんだろう。
2019/02/05 - 2019/02/06
この文章は小関悠が書いた。特に明記のない限り、この文章はフィクションであり、私と関係がある、もしくは関係のない、組織や団体の意見を示すものではない。
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