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政治家に学ぶキャリア・デベロップメント

「政治家に学ぶキャリア・デベロップメント」みたいな本があれば面白いのではないか、と思った。私は政治に詳しくないので、誰か書いて欲しい。

 

世の中にはすでに、溢れるほどキャリア・デベロップメントの本がある。問題は、そうした本の著者が、本当に信頼に足る人なのか分からないということだ。特に会社員は、どれだけ立派なキャリアに見えて、どれだけキャリア・デベロップメントをうまく語っていても、本当に仕事が出来る人のかどうかは、外からはなかなか分からない。

 

私も社会人としてそれなりの経験を積んだため、メディアでもてはやされる人がえてして業界では仕事のできない人として有名だったり、ものすごく仕事のできる人が社外にはまったく知られていなかったりという例をたくさん見てきた。(告白すれば、私も一番メディアに寄稿していたのは、研究員として仕事のなかった時期であった)

 

その点、政治家は分かりやすい。いやもちろん、仕事のできる政治家、できない政治家というのを評価するのは難しいが、少なくとも選挙に強い弱いは明白に分かる。結果がキャリアを築きあげていくのである。そういう意味では、スポーツの世界に近い。「Jリーガーに学ぶキャリア・デベロップメント」でもいいかもしれない。

 

こういうことを考えはじめたのは、先の都知事選であった。ご存知のとおり小池都知事は、カイロ大学を卒業して、ニュースキャスターを経て、日本新党から政界に入り、地元の兵庫県を選挙区にしていたが、新進党、自由党などを経て、自民党では郵政選挙の刺客として東京の選挙区へ鞍替えし、そのあとの都知事就任へと繋った。転籍の繰り返しをどう評価するかはさておき、いわゆる「地盤」を持たない政治家としては、見事なキャリア・デベロップメントではないだろうか。

 

蛇足ながら、世間には都知事のそうした野心的なキャリア・デベロップメントを揶揄する声もあるけれど、これが男性の政治家であったなら、使える人間は使い、機を見て所属を変える、乱世をのし上がる傑物として、好意的に評価されたかもしれない。つくづく女性のキャリア・デベロップメントは難しい。

 

ともあれ、政治家を見ていても、キャリア・デベロップメントには色々あるのだなと感じる。当たり前だけど、主流派じゃないと苦労するんだな、とか。外部の評価が高くても内部の評価が低ければ出世はできないんだな、とか。順番を待っていても出世できるとは限らないんだな、とか。年功序列だし、イメージ戦略も重要だし、結果が伴っていれば学歴などは問われないというのもある。

 

あとは言うまでもなく、家柄が重要だ。悲しい話だが……。

 

2020/09/02

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この文章は小関悠が書いた。特に明記のない限り、私と関係がある、もしくは関係のない、組織や団体の意見を示すものではない。

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