ディストピアなショートショートをときどきネットに書いているせいか、何人からか「Netflixのブラック・ミラーを観たほうがいいですよ、きっと気に入りますよ」と言われていた。正直に言うと、自分のネタと被りそうなSFを観るのは、あまり乗り気ではないのだが、まあNetflixの作品に「このネタ、俺も考えてたのに!」と言っても仕方がないので、2019年の2月から10月までのあいだに一通り見ました。
結論から言うと面白かったです。以下、各話のショートレビュー。どれから観ればいいのか迷ったスタートレックファンは参考にしてください。
1話からこれかよ! 子供は寝ろ! 大人も2話から見たほうがいいな! でもシリーズ他作品よりテクノロジー少なめ、アクション多めの異色作だったなと、後になって気付く。8点。
ハムスターのように生かされる男、いかにもディストピア。こんな組織めちゃくちゃ非効率的じゃないかと思うし、こんな世界に遺産相続なんかないだろと思うんだけど、オチはちょっと好き。6点。
完全記憶もの。無理に風呂敷を広げず、こういう技術が実現したら、こういう面倒くさいことが起きる~という男女のいざこざをチマチマやるのがいい。7点。
ディストピアというよりは、スティーヴン・キングみたいな正統派ホラー。もっとテクノロジー感出してくれないと退屈なんだけど、巷では一番の傑作と言われているようで、やっぱりみんなヒューマンドラマが好きなんだな。4点。
徹頭徹尾なんだか訳の分からない感じで、途中で訳が分かってからも、無茶苦茶なテンションが続くのが良い。ディストピアなのかカルトなのか、ともあれめちゃくちゃで面白い。10点。
これはなんだか今すぐにも実現してしまいそうというか、VTuberやね。今になっては分裂を続けるキズナアイのほうが未来。5点。
マッドメンでおなじみジョン・ハムのうさんくささだけでおなかいっぱいの楽しさだが、複雑な構造の物語のわりには、あんまり絡みあっておらず、なんの話だったかという感じ。4点。
どストレートなソーシャル評価経済もの。頑張る主人公が点数を上げようとするもひどい目にあって……という展開にはなんの驚きもないけど、主演のヤケクソな勢いだけで笑ってしまう。7点。
こちらも、どストレートなAR/MRもの。この設定ならもっと無茶苦茶な展開にも出来たのでは、ホラーだったらもっと怖くできたのでは、と。オチも弱い。4点。
ネット脅迫ものだけど、これはあえて今の技術でできることに絞っていてて、そういう意味で他の作品よりずっとホラー感がある。ディストピアなのは未来じゃなくて今なのだ、と。なんの救いもない。6点。
ベストエピソードと名高いが、やってることはノスタルジードラマなので、SFとしては物足りない。父娘のエピソードは感動ものだけど、だからこそオチと結びつかないことに不満。5点。
ゾンビと戦争! 展開はすぐに読めるけど、敵はどう作られるかという主題はとても現代的で見応えがある。めちゃくちゃ面白いと思うのだが、ベタすぎと世間の評価は低いみたいでがっかり。9点。
なんか普通にクライムサスペンスな作り。Twitterってフィクションでは衆愚プラットフォームとして描かれるのがもう定番だな。助手がやけに優秀で主人公の存在が希薄。妙に余韻の残るエンディングはなんなの。続編でも作るつもり。ちょっと長い。7点。
VR空間でなにをしたい? もちろんスタートレックだよね! 音楽、衣装、映像、すべてが完璧というか、スタートレック本編より金がかかってる。オタクをおちょくりつつ、無数の小ネタはもちろん、落し方までちゃんとトレッキーが喜ぶ作りになっていて、アメリカのオタククリエイターはこういうバランスが本当にうまい。物語自体も、バーチャルとリアルが行き交うなか、だんだんバーチャルのほうが重要になっていく様がとても良い。DNA採取で記憶は移植しないだろとか、ゲームの管理者ならもっと権限あるだろとか、細かいことを言っても仕方ない。それもスタートレックだし。10億点。
見守り監視社会。危ないものにはフィルタリングって、もうちょっとやりかたあるだろと思うけど、インターネットの現状を見てると、未来も案外こんな感じで杜撰なのかも。かつてストーカー被害で話題になったジョディ・フォスターによる監督作品という事実が一番ホラーな気がする。6点。
記憶再生もの。完全記憶ではなく、曖昧な主観が入りこむところに面白みがあり、それを利用するのが保険屋というのがいい。どんどん悪いほうに転がっていくのはサスペンスドラマの常套手段で、オチも良い。なぜクロコダイルなのかは色々説があるらしい。8点。
マッチングアプリと音声エージェント。めちゃくちゃセックス回だ。良い出会いとはどういうものかを考える流れは寓話的なのだが、オチはさすがにちょっと壮大すぎる。サン・ジュニペロもそうだけど、怒ったけど特に理由なく仲直りという流れに違和感があるのは、私が執念深いせいだろうか。これだけ未来でもベッドで本を読むのはいいね。6点。
制作協力Boston Dynamics。かっこいいけどふつうのサスペンス。6点。
小さなエピソードが連続するなら、最後には一つにまとまると思うじゃないですか。意識がデジタル化するわりに巻き戻せないのは、メモリーが足りないとかそういう理由だろうか。とってつけたようなオチも謎。4点。
いや、やっぱりVRといえばエロだろ、という分かりやすさ。カリスター号、クロコダイルに続き、また側頭部に取り付けるデバイス。効能がすごすぎて、ちょっと説得力を与える努力くらいして欲しい。あと、カプコンに怒られて欲しい。オチはシリーズ屈指の満足感。8点。
Twitter的な会社のCEOを脅迫する、Uberみたいな会社の契約ドライバー。普通にありそうでこわい。CEOがちょっとジャック・ドーシーに寄せてて笑う。スマホ中毒はよくないねー、と普通の結論になってしまうが。6点。
スマートアシスタントとアイドル。そんな簡単に脳は移植できないやろ、ってこのシリーズ何回目かという感じだが、アイドルの二面性が物語と結びついていて面白い。そこにマイリー・サイラスを持ってきたのが素晴らしいよな。もっと破綻して欲しかったけど、8点。
22作品に与えた得点で各話の平均をとると、4500万点くらいになるので、やっぱりNetflixってすごいなと思った。もっとまともな各メディアでの評価はyomoyomoさんがまとめています。
(*) インタラクティブ映画のバンダースナッチはめんどうで観ていない。
2019/02/17 - 2020/03/25
この文章は小関悠が書いた。特に明記のない限り、私と関係がある、もしくは関係のない、組織や団体の意見を示すものではない。
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