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12人いた話

大学一年のとき、ポケゼミという制度があった。一年生を対象とした、ポケットなゼミ? というものらしい。他の大学でも一般的なものなのか分からないし、そもそも私は今もゼミというものがよく分かってない。とにかく一年生が教授とわいわいやる会である。

 

幾つかのポケゼミがあり、そのうちの一つが昆虫に詳しい大学教授が昆虫「以外」について考える会だというので、面白そうと思って応募した。定員は10人だったが、同じように興味を抱いた人が多かったのか、30人近くの応募があり、私は抽選に漏れた。

 

私はそのゼミに行きたかった。せっかく大学に入ったのだから、当たり前にとらなきゃいけない講義以外も参加してみたかったし、また地元を離れて一人暮らしを始めた私には友達がおらず、同じ学部で仲良くなれそうな人がそのゼミに受かったとも聞いていた。

 

そういうわけで、私はそのゼミの初回に、ふつうに顔を出すことにした。抽選に受かっていない人間が参加していることはすぐにバレるだろうが、反対に受かった人も気を変えてドタキャンしているかもしれない。いずれにせよ、追い返されることはあるまい、と思ったのだ。

 

驚くべきことに、初回のゼミには12人がいた。受講生は驚き、教授も驚き、私も驚いた。しかし私の予想通り、犯人探しは行われず、ゼミはそのまま半年続き、私は単位を得た。

 

後日の飲み会で、もう一人の受講生から、抽選の結果など始めから気にせずに参加していたことを教えてもらった。上には上がいる。

 

ウディ・アレンの言葉に「成功の80%は顔を出すこと」(80% of success is showing up)というものがある。その解釈には色々あるらしいが、私にとっては、中学受験、高校受験、大学受験と、試験の結果がすべてという正攻法の仕組みを経て、このポケゼミが初めて物事に裏口から入るこむ経験であったと思う。

 

以来、ときどき人生には裏口から入ろうとすることも必要だなと思っています。

 

2019/05/22

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この文章は小関悠が書いた。特に明記のない限り、私と関係がある、もしくは関係のない、組織や団体の意見を示すものではない。

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