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ロボットたちの仕事

 工場に最新式のロボットが押し寄せてきたとき、私達に残された仕事はなにひとつもなかった。私達はその日のうちにラインから外され、最新型ロボットたちがその場所を奪った。慣れ親しんだ仕事を、それらのロボットに教える必要さえなかった。ロボットたちが自慢の人工知能でまたたく間に全く新しいオペレーションを作り上げていく様子を、黙って見ているだけだった。

 

 何年ものあいだ、私達はオペレーションにコツコツと改善を重ねてきた。反復作業を発見し、動作の確実性を高め、作業時間は秒単位で削減された。私達はかなり洗練されたラインを持つという評判で、他の工場からも見学に来るほどだった。しかし最新式のロボットは、そうして積み上げたオペレーションをバラバラにした。私達が三人がかりで進めていた作業を、ロボットは一括りにまとめて、事も無げに処理するようになった。腕の数からして違うロボットにより、これまでは想像もできなかったようなオペレーションが可能になったのだ。

 

「導入コストは高くついたが、これなら半年で取り返せるな」視察にやってきた幹部がそう言うのが聞こえた。

 

 ロボットたちはオペレーションの最適化を済ませると、すぐに調達や配送にも注文をつけるようになった。私達は有事の時のために一週間ほど工場に留まったが、結果として分かったのは有事など起こらないということだった。次の仕事を紹介すると上司に言われ、ほどなくそれは当初予想していたような配置転換ではなく、退職勧告と再就職の斡旋だと気付いた。

 

 同僚たちは次々と去って行った。私自身、二ヶ月後には名前も聞いたことのないような中小の部品工場で働くようになった。工場というよりは工房とでも呼ぶべきような小さなその職場では、人間たちが極めた単純な反復作業を繰り返していた。そこで初めての人工知能ロボットであった私は溜息まじりにオペレーションを組み換え、ほどなく人間をすべて解雇した。

 

2015/12/08 - 2015/12/15

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このページにある全ての記述は、特に明記のない限りフィクションです。また著者である小関悠が個人の立場で書いたもので、所属する組織などの立場や意見を示すものではありません。
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