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流れるプールに流されて

 流れるプールに流されて、僕はぷかぷかと進んでいる。太平洋の様に広い流れるプールだった。流れる速度はそんなに早くない。僕はスーツを着ていた。タケオキクチのスーツ。クリーニングに出したら大丈夫かな、と僕は思った。周りには誰もいなかった。ただ野菜が浮かんでいた。南瓜、キャベツ、玉葱、人参、南瓜、ピーマン、南瓜。南瓜がよく目についた。沈まないのかしらと思って下を見ると、南瓜が幾つも沈んでいた。「そのへんどうなんだろう」と僕は口に出した。誰も答えなかった。「誰か鏡持ってる?」と僕は言った。やはり誰も答えなかった。僕は喋ることをやめた。はじめは辛かったが、自分も野菜なのだと思うと楽になった。ただ、少し寒かった。

 

2001/12/20

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この文章は小関悠が個人の立場で書いたもので、所属する組織などの立場や意見を示すものではありません。特に明記のない限り、この作品はフィクションです。

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