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サムシング

 彼のちょっとした仕草が気になる。良きにしろ、悪きにしろ。あるいは始めは好意的に、途中からはそうではなく。何が自分の中で変わったのかは分からない。彼が変わったのかどうかも。もしくは、こう考える。物事は、基本的に変化していく。その中で周りと異なる変化を見せたもの、それがひずみになっていくのだと。

 椎名林檎が「ビートルズは中期」とか言ってリボルバーとラバーソウルを高く評価するインタビューが載った雑誌を私は捨てる。そして、他に捨てるものがないかと部屋中に目を光らせる。ゴミの日の度、私は生まれ変わろうとする。週に二回、ペットボトルと缶ゴミの日も合わせると三回。髪を切る度、私は生まれ変わろうとする。しかし、もちろん生まれ変わることはない。捨てなかったものが、切らなかった髪が、私を邪魔するのだと、私は安直に考える。

 死んだ兄は「最新盤に勝る良盤なし」と言った。「ビートルズならレットイットビーね」と私が言うと、兄は「アビーロードの方が録音が新しい」と笑った。

 人間の良いところは、同時に幾つものことが出来ることだ。私は「ヒアカムズザサン」を聴きながらジョージのことを思い、兄のことを思い、彼のことを思った。昔はこんないい曲だと思わなかったなと、少し叙情的な気分になりながら。あとは彼が戻るのを待つだけだった。

 

2001/12/20

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