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ある2ちゃんねらーの生と死

 ある2ちゃんねらーの男が人生に絶望し、自殺を思い立った。男は2ちゃんねるに自殺予告スレッドを立てた。タイトルは「1000まで行ったら自殺します」。本文は「一番書き込みの多かった方法で」。スレッドはすぐに落ちた。14番目の書き込み「過疎ってるな」が最後だった。

 

 翌週、男はまたしても人生に絶望し、今度こそ自殺しようと決意した。男はまたも2ちゃんねるに自殺予告スレッドを立てた。タイトルはシンプルに「自殺します」。本文は前回と同じ「一番書き込みの多かった方法で」。今回はすぐにレスポンスがあった。それも大量の。「生きろ」というのがその大半だった。「百年ROMれ」「孫に囲まれて老衰で死ね」といった書き込みもあった。自殺の方法を書く人は誰もいなかった。スレッドはそのまま1000まで到達した。

 

 男は感激して、新しくスレッドを立てた。タイトルは「自殺はやめます」。本文は「ありがとう、みんなのおかげで生まれ変わりました」。やはり、すぐにレスポンスがついた。「迷惑かけやがって、死ね」。

 

 それから警察がやってきて、男はたっぷり説教を食らった。

 

2009/02/25

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この文章は小関悠が書いた。特に明記のない限り、この文章はフィクションであり、私と関係がある、もしくは関係のない、組織や団体の意見を示すものではない。

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