変なメガネをかけてる人っているじゃないですか。普通の会社員で、普通のスーツなのに、メガネは真っ赤、みたいな。あるいは真っ白だったり。あるいは右が白で左が赤だったり。本当に、どこで売ってるのそれ、っていう。
僕が最近知り合った友達もそうで、いつも変なメガネをかけてて、しかも会うたびに違うメガネなわけ。時には紫だったり、時には水玉だったり、時には右が紫で左が水玉だったりするわけよ。
メガネ、何本くらい持ってるの？ って聞くよね。そしたら100本くらいだと。100本!? 100本もいる？ そう聞いたら、そんなにいらないことは分かってるんだ、と。でも毎月お給料日になると、ついつい1本2本買っちゃうんだ。
その友達は小さいメーカーで働いて、まだ若いから、まあそんなにめちゃくちゃ金持ちってわけではないでしょうよ。結婚もしてない。趣味も特にない。ただ、給料日になると1本か2本メガネを買って、自分の部屋のメガネ置き場に置いてる。ボーナスが出たら2本か3本メガネを買う。いまや部屋全体がメガネ置き場になってる。
部屋はもうメガネでいっぱいで、メガネの上にメガネを置いてるわけ。そのメガネは一生のうちにあと数回かけるかどうかも分からない。100本もあるわけだし。買ってそれっきりのメガネとかまである。
僕に言わせれば、それはもうメガネが繁殖してるのよ。メガネがメガネを生んでる。言わばメガネが本体で、人間に寄生してサラリーマン仕事をさせて、月に一度繁殖しては仲間を増やしてるわけ。
本人に言ったら否定されたけど、そりゃあメガネは否定するよ。「ハイ、人間ヲ操ッテマス！」とか言わないでしょ。でもそうとしか言えない。メガネが人間に、結婚はするなよ、酒や博打は控えろよ、って伝えてるのよ。
だってもう21世紀なのに、未だにメガネがどうとか言ってるのがおかしくないですか。コンタクトレンズとか、もうちょっと進化してもいいでしょう。レーシックとかさ。
レーシックって言うとメガネの人は「ウェッ」って顔をするわけだけど、それもメガネが言ってるわけよ。メガネ「レーシック？ ウェッ」って。
そう考えてみると、変なメガネをかける人も分かる気がする。あれは街で繁殖相手のメガネを探してるんだよね。変なメガネを買うと、そのメガネから、もっと変なメガネを買えという指令が来るわけ。そうやってメガネ種の爆発が起きる。利己的な遺伝子だよ。
2018/04/18
この文章は小関悠が書いた。特に明記のない限り、この文章はフィクションであり、私と関係がある、もしくは関係のない、組織や団体の意見を示すものではない。
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