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転職のお知らせ、あるいは一人のサラリーマンが40を前に考えることについて

私事だが、また転職した。5月いっぱいでBuzzFeed Japanを退職し、6月からGoogle Japanで働いている。BuzzFeedの同僚に「書くんですよねwww、退職ブログwww」と煽られたので書いておく。というか、辞める前に書いていたのだが、今日まで公開するのを躊躇ってしまった。なにしろ転職ももう3度目である。

 

私は浪人して、留年して、大学院を出たので、社会人になったときはもう26歳だった。ほどなく結婚して、子供が生まれて、自分ではなかなか順調だと思ってたけど、そのころには30歳をすぎて、アラサー(笑)とか言いながら子育てをしていたら、もう40手前である。時間の流れにゾッとする。

 

特に私は両親が若く、ようやく60を過ぎたところだ。子供が今の私のように40に近付くころには、自分は70をとっくに過ぎてる。うへえと言うしかない。もう一人子供がいたらいいかなと思わないでもないけど、もう無理かもしれない。同世代が病気で亡くなったりして、私も来年には死んでいるかもしれない。人生は短い。

 

あたりまえだが、最初に入った会社(三菱総合研究所)ではペーペーの新卒だった。次に入った会社(Facebook)は中途採用ばかりで、自分も中堅になれたかな、という感じ。しかし、そのあとに辿りついた会社(BuzzFeed)は若手がとても多く、40手前でははっきりと「年配の人」扱いであった。自分はまだまだ若いと思ってるのに、若手からは年配としての知見・振る舞いを求められる。あれ、もうそんな感じなの? と。

 

自分の能力や経験に自信がないというわけではない。しかし、あらためて履歴書を書き直してみても、お役所向けのレポートとか、毎年更新される媒体資料くらいしか、形に残るものを作ったことがない。業績? 表彰? があるわけでもない。色々やってきたが、なにかの専門家になったという感じはしない。Facebook広告についてはある時期、日本で一番詳しかったと思うが、そういう知識はあっという間に風化していく。

 

「パパってなんの仕事をしているの?」と子供に聞かれても、なんの仕事をしているか説明することさえおぼつかない。フォン・ノイマンは29歳で終身教授になったというのに。

 

まわりを見れば、40歳はおろか30前で経営者になり、エクジットして資産家になる人もいて、大手企業でそれなりの役職につく人もいる。私はいわゆる氷河期世代なので、たぶん他の世代以上に、まったく上手く行ってない人もいれば、すごく上手く行ってる人もいる。

 

さらに考えさせられるのは、これまで恵まれた会社で働いて、恵まれた待遇を受けても、別に都心の一軒家に住めるわけでもなければ、高級車を乗り回せるわけでもないということ。頑張って受験勉強して、いい大学に入って、いい会社に入ると、毎朝東京の満員電車に乗れるのである。

 

街にはたくさんの家が並んでいるのに、自分ができることと言えばそこを借りることくらい。都心にありふれたフェラーリやらポルシェやらを見かけるたび、どういう仕事をすればこの車に乗れるわけ??? と。

 

仕方ないので、毎日ヒップホップを聴いては、ゲットリッチ、ゲットマネー、と満員の地下鉄のなかで首を振るのだ。

 

なんの話だったか。

 

前にもすこし書いたが、Instagramの仕事をしていた時は、リサーチの担当としてFacebookから社内移籍をしたところ、いろいろなドラマがあって広告の立ち上げを主導することになり、それが落ち着いた時にはリサーチの専門に戻る気力がなくなっていた。

 

BuzzFeedでもデータの担当として入社したつもりが、広告事業立ち上げ経験者として広告事業の立ち上げをやることになり、気付いたときには商品の仕様を決めて、媒体資料を書いて、人を採用して、売上と利益の管理をして、営業戦略を説いていた。「Facebook/Instagramより小さな会社で色々やりたいなあ~」と願っていたら、めちゃくちゃ叶ってしまったという感じだ。

 

それで、去年の末に色々な仕事が落ち着いたら、もう続ける気力がなくなってしまった。

 

今回は久々にちゃんと転職活動をしたので、嫌でも自分ってなんなのだろうと考えさせられた。広告業界に携わってきたけど営業畑ではない。リサーチ屋だけどデータサイエンティストというほどの専門性はない。マーケターを相手にしてきたけどマーケティングの経験があるわけでもない。直近では事業開発を名乗ってるけどいわゆる大型ディールをまとめたわけでもない。

 

リクルーティング会社には何でも出来そうな人間に見えるのか、営業のいいポジションがあるとか、事業開発をやらないかとか、プロジェクトマネジメントに興味はないかとか、話だけは色々と振ってきて、でも実際に企業と話をしてみるとちょっと違うよね……みたいな。

 

恐しいのは、そうやって色々な話をいただくのは、過去に仕事でお付き合いのある会社だったり、友人のいる会社だったり、面接に出てくるという人が知り合いの知り合いだったりということばかりで、本当に業界というのは狭い。

 

なにかの本で、20代は才能で、30代は経験で、40代は人脈で仕事をしろ、みたいなことが書いてあったのだけど、私は人間関係とか面倒なことは嫌でデジタルの世界に来たのである。せめて丁寧に仕事をして実績を積んでいくしかないと痛感した。

 

そんな中で運良く、広告営業に携わるリサーチャーを探している会社があって、それがGoogleだった。どういう仕事をするのかはまだ学んでいる途中だが、拾ってもらったからには頑張ろう、と思う。生きていくしかない。

 

ここまで改めて読んでみると暗い。

 

いつものことですが、BuzzFeedでは社内外で多くの皆様に助けていただきました。ありがとうございました。特に、生まれて間もない広告媒体に出稿いただいた広告主・代理店の皆様には、心から感謝しています。今後とも何卒よろしくお願いします。

 

2018/05/09 - 2018/07/13

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この文章は小関悠が書いた。特に明記のない限り、私と関係がある、もしくは関係のない、組織や団体の意見を示すものではない。

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