youkoseki.com

ある2ちゃんねらーの生と死

 ある2ちゃんねらーの男が人生に絶望し、自殺を思い立った。男は2ちゃんねるに自殺予告スレッドを立てた。タイトルは「1000まで行ったら自殺します」。本文は「一番書き込みの多かった方法で」。スレッドはすぐに落ちた。14番目の書き込み「過疎ってるな」が最後だった。

 

 翌週、男はまたしても人生に絶望し、今度こそ自殺しようと決意した。男はまたも2ちゃんねるに自殺予告スレッドを立てた。タイトルはシンプルに「自殺します」。本文は前回と同じ「一番書き込みの多かった方法で」。今回はすぐにレスポンスがあった。それも大量の。「生きろ」というのがその大半だった。「百年ROMれ」「孫に囲まれて老衰で死ね」といった書き込みもあった。自殺の方法を書く人は誰もいなかった。スレッドはそのまま1000まで到達した。

 

 男は感激して、新しくスレッドを立てた。タイトルは「自殺はやめます」。本文は「ありがとう、みんなのおかげで生まれ変わりました」。やはり、すぐにレスポンスがついた。「迷惑かけやがって、死ね」。

 

 それから警察がやってきて、男はたっぷり説教を食らった。

 

2009/02/25

ツイート このエントリーをはてなブックマークに追加

この文章は小関悠が書いた。特に明記のない限り、この文章はフィクションであり、私と関係がある、もしくは関係のない、組織や団体の意見を示すものではない。

星新一賞入選のロボット子育て小話「キッドイズトイ」はAmazon Kindleにて100円で販売中。

その他のテキスト

肉じゃが天国、肉じゃが地獄
料理が得意だという女の子と知り合った。そして一時間後には彼女の家へ肉じゃがを食べに行くこととなっていた。真冬に大学寮の友人がバーベキュー・パーティを企画して、そこで出会った。寒さに凍えながら一緒にキャベツを食べていたら自然と仲良くなったのだ。自然と仲良くなるのが苦手な私には奇跡的なことだった。……

捨てろ
風邪をひいた時は思い出の品を捨てると早く治るという慣習が父の生まれた地方にはあった。だから私が風邪をひくたび、父は真剣な顔をして「何を捨てるか?これか?あれか?」と部屋を漁り、勝手に思い出の品を捨てまくった。ふだんの父は、人の親を演じるには寡黙すぎて、社会を生きるには繊細すぎる人だった。上司に批判されて家で三日間寝込む父。中学生以来、日記に見た夢をすべて書き記している父。そんな父が、誰か風邪をひいたときだけ溌剌として、めぼしい思い出を探して捨てるのだ。……

父の仕事:お菓子の密輸
仕事によっては、お給料以外にもいい思いをすることがある。夕食付き、飲み屋で接待、社宅提供、新作ゲームで遊べる、子供に大人気、社員割引、アイドルに会える、などなどなど。いわゆる役得というやつ。……

テレビ・スターよ永遠に
テレビの世界に相対性理論は適応されない。相対性理論において光速に近付いたものは時間の流れが遅くなる。一方で知っての通り、テレビとは光である。カメラに収められるのは光の集合体であり、その光が各家庭へ届けられる。テレビの世界ではあらゆるものが光の速さそのもので流れる。おまけに、その中において時間はとてつもなく早く進む。気付いたときにはあらゆるものが終わり、取り返しがつかない。そして関わるあらゆる者が老いている。……