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犬と猫

帰り道、犬がいた。白い小犬。家では飼えないし、詳しい種類とかは知らないけど、僕は犬が好きだったから、近寄ってみた。赤い首輪をしていた。迷子になったのかな、と思った。背中を撫でると、気持ち良さそうに道路にへたりこんだ。僕は少しの間、背中を撫で続けた。

 

誰か知らない女の子がやってきて、僕が犬を撫でるのを見ていた。女の子がずっとこっちを見てるので、僕は声をかけた。ここを歩いていたんだ。なんて名前だろうね。女の子は少し驚いた様な表情で、少し考えて、小さな声でこう言った。三毛猫だから、ミケじゃない?

 

小さい頃、叔母が猫を飼っていた。引っ掛かれた事がある。三毛猫の、ミケという名前だった。ミケと初めて会った時、僕は安直なその名前をバカにした。するとまるで僕の言い方に怒ったかの様に突然僕に襲いかかってきて、腕と足を随分と引っ掛かれた。あれ以来、僕は猫が嫌いだった。

 

僕はそれでも犬を撫で続けていた。猫って可愛いよね、ちょっと気取ってて。女の子はそう言った。僕は無視して犬を撫で続けた。あ、ここにいたよ、ママ。振り返ると、男の子がこちらに向かってきて走っていた。少し遅れて、男の子の母親らしき女性が歩いている。男の子は僕の前に立つと、慣れた手つきで犬を抱いた。ほら、ミケ、帰ろうよ。男の子はそう言った。僕は女の子の方を見た。女の子は笑っていた。

 

1998/12/04

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この文章は小関悠が個人の立場で書いたもので、所属する組織などの立場や意見を示すものではありません。特に明記のない限り、この作品はフィクションです。

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