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[PR] 記事タイトルでどこまで開示すればいいか問題 [ではない]

ステマ論争からタイトルにPRつけるか論争が蒸し返されているのを見て、もういっそこれくらいのガイドラインを作ればいいのではないかと思った。もちろん冗談ですので本気しないでください。

 

[PR]

スポンサードコンテンツ、ブランデッドコンテンツ、タイアップ、記事広告、いろいろな言い方があるけれど、特定の企業からお金をもらって書かれた記事。たくさんクリックされると嬉しいが、クリックされまくってももらえるお金が増えるわけではないのが一般的。

 

[AD]

スポンサードコンテンツではないが、記事の前後左右や途中にバナー広告や動画広告があるため、記事をクリックされると広告が表示され、それに概ね比例してお金が入る。どういう広告が表示されるのか、記事を書いた人間でも分からないことが多い。

 

[AD-ビューアブル]

記事の前後左右や途中にバナー広告があるため、記事をクリックされると広告が表示されるが、実際にお金になるのは画面に表示された広告のぶんだけという場合。ビューアビリティーと言われ、「バナー広告を配信してブラウザ上で表示されても、人の目に届いてないものは効果がないのでは?」と業界内で話題になったため、この部分を気にする広告主が増えている。

 

[AD-CPC]

記事中にクリック課金型の広告がある。記事をクリックされるだけではお金が入らず、さらにそこから広告がクリックされて初めてお金が入る。昔は広告をクリックしまくってサイト主を助けよう、みたいな素朴な活動があった。逆に「クリックしてください!」みたいなことをサイト運営側が呼びかけると、広告プラットフォームから怒られることが多い。

 

[AD-全画面]

記事を読む前に全画面の広告が出てくるやつ。全画面広告というとウザく感じることがバレてしまうため、業界ではインタースティシャルと呼ばれる。全画面広告を出すと記事を読む人が減るという意外な副作用に気づいたのか、最近はあまり見かけなくなってきた。

 

[PR-自社広] [AD-自社広]

スポンサードコンテンツやバナー広告だけど、その中身は自社のサービスとか関連会社の商品だというやつ。昔は自社広だらけで傍目に収益性が不安になるメディアもあったが、ネットワーク広告の発展でそういうのは見なくなった。それゆえに「有料会員になろう!」みたいな自社系のバナー広告がガンガン出ていると、いまはそっちを優先してるんだーなどと気づいたりする。自社稿というのは厳密には違う意味らしいが、概ね同じように使われている。

 

[PR-値引き]

スポンサードコンテンツの出来はメディアの評価にも直接関わってくるのだが、一方でどれだけ予算をかけるかによって中身の充実も変わるわけで、メディア側としても「しょっぱい内容に見えるかもしれないけど、そもそも予算がぜんぜんもらえなかったんだよ! 媒体資料どおりの予算がもらえればもっとちゃんとしたもの作るから!」みたいな魂の声はタイトルに載せてもいいと思う。

 

[PR-2日で作りました]

そういうのもある。突貫でスポンサードコンテンツを作れるメディアは業界では重宝される。

 

[PR-自分]

自分の本が出たとか、自分がイベントに出るとかいう記事。こういうのを謙虚に「ステマですみません」などと書く人がいるおかげで、ステマの定義が混沌としている。

 

[PR-フェイク]

お金をもらってるわけでもなんでもないのに、広告っぽいコンテンツを作って#PRとアピールすることで「私は○○社からも広告を受けた」みたいな実績にする事例がインフルエンサーまわりだとあるらしい。正直、ちょっと賢いと思ってしまった。

 

[リマケ元]

記事内に広告があるかないかは関係なく、記事に訪問した人の情報をクッキーなどを介して広告プラットフォームに共有することで、いわゆるリマーケティング広告の配信に活用するもの。

 

[企業メディア]

このメディアすごい読みやすいし中身も充実してるし広告も全然ないけど、なんで? と思ったら企業が運営していたというやつ。「通販サイトが運営する通販で買えるおもしろい商品の紹介メディア」みたいに分かりやすい例もあれば、「レストラン情報サービスが運営するサッカー選手のインタビュー記事がやけに充実しているメディア」みたいな不思議な例もある。本業への貢献度が明確でないと、メディアとして人気があっても経営方針によって急に閉鎖されたりする。

 

[アフィ]

アフィリエイトの略。商品やサービスの紹介記事で、記事中のリンクから商品の購入やサービスの登録を行うとお金が入る。そもそもの英語の意味を失ってる気がする。熱心なファンは紹介されていない商品でもアフィリエイトのリンクを経由して購入することで運営に還元しようとするし、アンチは商品やサービスが気に入っても検索し直したりしてアフィリエイトのリンクを迂回する。「あなたのことがずっと好きでした」みたいなタイトルの本をアフィリエイト経由で買って運営にメッセージを伝えようとするクリエイティブな読者もいる。

 

[ギガ]

広告であるかないかに関わらず、文中に高画質すぎる画像や複雑すぎるJavaScriptや自動再生される動画などがふんだんに含まれているせいで、めちゃくちゃ通信量を消費する記事。読者の実質的な損失という意味では一番かもしれない。

 

[実物贈与] [献本] [試写会招待]

商品やサービスの紹介記事だが、自腹で買ったわけではなく、もらったりタダでサービスしてもらったものである。発売日すぐに本のレビューが公開されて「どれだけ読むの早いの?」と思ったらこれ(献本)。映画の試写会に呼ばれるのも同じ。

 

[実物貸与]

商品やサービスの紹介だが、自腹で買ったわけではなく、レンタルされたものである。人気ガジェットが発表と同時に各所で詳細レビュー記事・動画が公開されたりするのを見ると、あのメディアは貸与(贈与)されて、あのメディアは貸与(贈与)されなかったのか、というのが分かる。レンタル品が多くなると管理が大変になるが、返し忘れると怒られて、そのメディアでその企業の商品紹介を二度と目にしなくなる。

 

[プレスリリース起こし]

商品やサービスを実際に目にしたり触ったりしたわけではないが、プレスリリースが送られてきたのでそれをもとに書かれた記事。リリースを丸コピペで済ませることもあれば、さも独自取材のように内容をうまく膨らませられる職人もいる。

 

[プレスリリース解禁日時やぶり]

「何日の何時以降に記事にしてください」というプレスリリースに書かれた注意書きを無視して配信された記事。業界における三大禁忌の一つ。タブーを破った者は地下に送られ、二度と日の目を見ることはないという。

 

[発表会招待]

商品やサービスの紹介記事だが、そもそも事前に発表会にお呼ばれして書かれたもの。発表会に呼ばれたからといって記事を書く義務はないのだが、そうすると次から発表会に呼ばれなくなったりして、なんとなくの紳士協定がある。呼ばれる側は、限定イベントだと思って行ったら一般も普通に入れた、みたいなガッカリ例がある反面、呼ぶ側も、好意的な記事を書いてくれると思ったら辛辣にディスられる例もあり、お互いに記事が掲載されるまでやきもきする。発表会から記事出しまで早いメディア、遅いメディアなど横並びで見るとけっこう面白い。米Gizmodoが盗難された開発中のiPhoneを買いとって記事にしたため、Appleの発表会に呼ばれなくなったのは有名。

 

[発表会招待-ビジネスクラス]

海外の発表会だとそういうこともある。さりげなくFacebookのチェックインで「え、オレはビジネスで呼ばれたけど?」感を出すのがコツ。

 

[発表会招待-お土産あり]

金銭的な授受はなくとも、発表会でお土産を渡されることはあり、それは会社のロゴがついたボールペンだけということもあれば、もうちょっとゴージャスなこともあるが、お土産の良し悪しによってそのあとに書かれる記事のモチベーションを左右することは決してない。

 

[友人] [人間関係] [バーター]

お金をもらっているわけではないが友人がやってる事業だったり、お世話になってる人の紹介だったりするので、純粋な気持ちというよりは頼まれてしぶしぶ、あるいはここで恩を売っていれば後でいいことがあるかもしれないな、と思って書かれた記事。

 

[利害関係]

これからは○○の時代が来る! みたいな記事の著者が○○系のベンチャーに出資していたりするような例。大半は偶然で、純粋な気持ちから出資して、純粋な気持ちから出資のことを隠して記事を書いただけである。

 

[下心]

ノーコメント。

 

[推し]

広告でもなんでもないが、妙に熱意のある内容になったせいで、むしろ広告なのでは? と勘違いされるような記事。よくよく読むと熱すぎて広告主(広告主ではないが)にはハタ迷惑だったりする。また、なんでもないときに熱い記事を書いてしまうと、記事広告で頑張っても熱さが出ないときに困る。

 

[ステマ]

自己矛盾である。個人的には「広告って書いてあるからステマ」と言われる未来も近いのではないかと恐れている。

 

[計測]

計測ツールなどを入れて、PV数などをニヨニヨ見ている記事。カウンターが回っていればそれで幸せだった頃。自分でキリ番ゲットしてしまったあの日の思い出。

 

[私怨]

報酬とかしらん、個人的な恨みが果たせれば良い、というモチベーションによって書かれた記事。こわいけど人間関係で書かれた記事がある以上、その反対もわりとある。

 

[なにもない]

なにもない。広告もなければ利害関係もない。動機がない。なんのためにやってるのか謎。

 

2019/12/19

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この文章は小関悠が書いた。特に明記のない限り、私と関係がある、もしくは関係のない、組織や団体の意見を示すものではない。

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