youkoseki.com | テキスト | lulu.comで出版を始める方法

0.はじめに

私のように小説など書いていると、本にしたいなと思うことがある。けれども、自費出版はお金がかかる。まず多くの出版業者が百冊から注文受付なんて言うのだけど、そんなにいらない(売れない)。一冊からオーケーというところもあるけど、そのぶん割高で百ページで二千円以上かかったりする。あなたの本が書店に並ぶ、なんて謳っていた自費出版業者は、初期費用が数十万円かかるとか、ほとんどの本屋で見かけないとか、トラブルを抱えた挙句に倒産してしまう。

とりあえず自分用に一冊だけ、千円くらいで作れればいいんだ。あとは注文が入り次第、千円で増刷できればいいんだ。そういうサービスはないのか。

lulu.comがそういうサービスである。lulu.comはなんと初期費用がいらない。だからもはや「自費出版」とは言えない。原稿をアップロードすれば、あとは注文が入り次第、印刷して注文者に送ってくれるだけ。リスクフリーである。ペーパーバックだと$6くらいからで、そのへんの業者よりずっと安い。自分で注文すれば自分の本の出来上がりだし、原価以上なら値段を好きに決められるので、他の人が注文してくれれば利益を得ることもできる。海外サービスだけれども、日本語の本も作成可能。数ドルの送料と二週間ほどの時間をかければ日本にも送ってくれる。完璧だ。

唯一の問題は、海外のサービスなので、右開きの本が作れないというところである。でも小説なら縦書きにしたいし、縦書きなら右開きである。だから本稿ではlulu.comの紹介をしながら、縦書き右開きの本を作る方法を示したい。本稿に従えば、私の小説「僕と僕と僕自身」のように縦書き本出版ページが20分くらいでできるはず。

1.準備

出版にあたって「原稿」と「表紙のアイデア」を準備する。原稿はプレーンテキストが望ましい。表紙はサイズが決まっていないので、まだ作る必要ない。

2.アカウント作成

lulu.comの"Sign Up"を選んでアカウントを作る。求められるのは名前(アルファベットが無難)、メールアドレス、オンラインストアのURL(http://stores.lulu.com/なんとか/という自分用のURLがもらえる。僕の例)、パスワード、国(Japanにしておく)、Language(JapaneseはないのでEnglishにしておく)くらいで、難しくない。

入力したメールアドレスにアカウント作成確認のメールが届くので、本文中のURLをクリックして登録を済ませる。一般的なウェブサービスと同じ。

3.プロジェクトを作る

作成したアカウントでlulu.comにログインしたら、メニューから"Publish"を選ぶ。するとlulu.comで作ることのできる商品の一覧が表示される。ペーパーバック、ハードカバー、写真集などの本が出版できるだけでなく、CDやDVDの作成も可能だし、自作の画像、着メロなどをデジタル販売することもできることが分かる。しかし本稿では小説本の紹介に絞る。というわけで、Paperback booksかHardcover booksを選ぶ。ページ数にもよるが、前者はだいたい\1000コース、後者は\2000コースである。

4.タイトルと著者名を選ぶ

進めると、タイトルと著者名を選ぶウィンドウが表示される。タイトルは日本語で構わないが、著者名は英語にしておくのが無難。日本語で正直に入力すると最終的に「悠 小関」みたいに姓名が反対になってしまう。

同時に、出版のタイプを選ぶ。「Private」は自分だけが注文できる状態。自分用の本が欲しい、自分で買って人に売ったり配りたい、というならこれ。他の人にもオンライン販売を行うなら「Lulu Marketplaceで売りたい」という選択肢を選ぶ。もう一つの「オンライン書店で売りたい」という選択肢は、ISBNを取得してAmazon.comなんかでも売るというサービス。有料で、そもそも日本での流通にはまだ対応していない。

5.サイズ、綴じ方、色を選ぶ

このあたりはお好みでどうぞ。残念ながら文庫サイズはないけれど、PaperbackならPocketという新書サイズがある。綴じ方はPerfect-boundが、いわゆる製本の形。色は白黒とフルカラーが選べるが、サイズや綴じ方によっては白黒のみになる。いずれにせよ表紙はフルカラー。

6.原稿の準備

横書き、左開きでいいや、という方は原稿をWord/プレーンテキスト形式にするだけ。Wordの場合は先程選んだサイズを用紙サイズにすることだけ注意。プレーンテキストの文字コードはShift-JISでもEUCでもUTF-8でも大丈夫な模様。本当は直接PDFでアップロードすることもできるはずなのだが、なぜか日本語フォントの埋め込みができていないと言われる。ともあれ原稿の準備ができたら8.に進む。

縦書き、右開きの場合は少々ややこしい。lulu.comは右開き印刷に対応していないので「左開きで印刷したら、右開き本になってた」という原稿を作る必要がある。奥付、最終ページから始まり、一ページごとに遡って、最後に扉が来るような原稿である。以下、そのような6.と7.で、そのような原稿の作り方を書く。

7.原稿を反転する

まず、一頁の行数Xと、一行の文字数Yを決める。16行40字など。そして原稿をY字毎に改行し、X行ごとに遡るようにする。具体的には、50行の原稿があって、一頁が16行なら、[1行目→50行目]となっているのを[49行目→50行目][33行目→48行目][17行目→32行目][1行目→16行目]と並べ替える。改行を行う時は、禁則処理に気をつける。

もちろん、手動ではとてつもなく面倒なので、プログラムを使う。私が作ったperlスクリプトを公開しておく。スクリプト中に入力するテキストの文字コード、行数と文字数を設定して、プレーンテキストを引数にして実行すると、反転したテキストを出力する。

8.Wordに貼りつける

4.で決めた用紙サイズ、6.で決めたX行Y字、縦書きのWordフォーマットを作り、そこに同じく6.で反転したテキストをコピーする。うまくいけば最終ページから始まり、最初のページで終わる原稿が出来るはずである。ただし、禁則処理、半角、フォントなどの影響でずれる場合があるので、よく確認する。

なお、原稿をアップロードする際に最低限必要な余白が表示されるので、これを守る。製本することを考えると、余白は用紙内側に多めにあるほうが望ましい。「ページ設定」の印刷の形式を「見開きページ」にして、内側の数字を大きめにするといい。

頁番号が欲しい場合は、逆順につける必要がある。{NumPages-Page+1}というフィールドコードになる。

奥付、扉は横書きが一般的なので、セクションを区切って作ると便利。

最後に、頁数が奥付、扉を含めて偶数になるようにする。奇数だと原稿の終わり(一般的には扉)が本の右側に来てしまう。

以上の設定も面倒なので、私が作ったWordのテンプレートを公開しておく。16行40字、新書サイズの例である。扉とその裏、奥付があるので、本文は奇数ページになるように作る(6.のスクリプトは自動的に奇数ページになるよう余白を入れる)。

9.原稿をアップロードする

以上により完成したWordファイルをlulu.comにアップロードすると、PDFに変換してくれる。PDFの段階で文字化け、ズレがないかを今一度よーく確認する。原稿を反転した場合は、左開きで印刷してみて、ちゃんと右開きになっているかを確認しておくといい。

10.カバーを作る

カバーはテンプレートに絵と文字を入れるだけのCover Designerと、一枚のPDFファイルとしてアップロードするadvancedがある。advancedを選ぶと、どれだけのサイズが必要か、背表紙がどこから始まるか、といった情報が表示されるので、それに従う。Illustratorか、なければinkscapeを使うと、簡単にPDFファイルを作れる。タイトルなど文字を入れる場合はパスを分解しておく。

11.詳細を入力する

本のカテゴリ(必須)、キーワード、詳細、言語…などなどを入力する。

12.値段を決める

Lulu Marketplaceでオンライン販売を行う場合は、値段を決める必要がある。Printというのは印刷して注文者に配送する場合の値段(送料別)。Downloadは電子ファイルそのままで販売する場合の値段である。

Print版の値段は原価+利益*1.25。例えば原価7ドルで、一冊売れるごとに2ドルの利益が欲しい場合は、利益の25%に当たる0.5ドル分がlulu.comのコミッションになり、合計で9.5ドルとなる。

Download版は6.7.で反転したWordファイルを作成した場合、当然反転された販売されてしまうので、売らないほうがいい。Download版も販売したい場合は、別プロジェクトとして反転していないバージョンを改めてアップロードすることになる。ただし、lulu.comはアップロードされたままのPDFを販売するだけで、DRMなどは特に用意されないので注意。

13.プレビューを変更する

以上で設定は終了、自分の本を世界中に販売することができる。

ただ、文章を反転して右開きにした場合はプレビューに問題が発生する。最終ページから表示されるので、いきなり結末が読めてしまうのである。これは"My Lulu"から作った本の"Revise"→"View book preview"→"Customize preview"と選んで、Previewをなくすか、表示するページを最初のほうにするよう設定を変えればいい。同様に表紙と背表紙が入れ替わって表示されるが、こればかりは仕方ない。日本版を待つのみ。

XX.その他の覚え書き

紹介した作業を一度に全てやる必要はない。lulu.comでは途中でプロジェクトやめても、"My Lulu"から続けることができる。このおかげで表紙のところで一旦中断、完成後再開してアップロード、といったことができる。

作った本の中身や表紙を修正したい場合は、"Revise"にある"Unpublish"または"Create New Revision"を選ぶ。タイトル設定、原稿と表紙のアップロード、という手順が繰り返される。設定した値段やプレビューが元通りになる場合があるので注意。

ログインして自分の本を注文すると、原価で購入できる。コミッションを払う必要はない。(もちろん収益もない)

収益はPayPalか小切手で受け取れる。前者は$5から、後者は$20から。まだ貰ったことがないので詳細は分からない。

ほかにアドバイス、疑問点などあったら追記しますので、お気軽にご連絡下さい。

2008/05/19

このページにある全ての記述は、特に明記のない限りフィクションです。また著者である小関悠が個人の立場で書いたもので、所属する組織などの立場や意見を示すものではありません。

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