7.もうすぐ今年も終わりということで、音楽雑誌は早くも今年を振り返るというような特集を組み始めている。そうした中でヒップホップについて触れる部分があれば、必ず取り挙げられるのがKanye Westである。今年のヒップホップは間違いなくKanye West中心に展開していたと、(ヒップホップに指向性のあるものなら)どのメディアも伝えている。先日発表になったグラミー賞ノミネートで、最多ノミネートとなったのが他ならぬKanye Westであることも一つの証拠となるだろう。かくいう僕も、今年のベストアルバムは彼のデビューアルバム、"
The College Dropout"だと思う。
9.でもKanye Westはそうじゃない。"
Blast"の候補にも当然挙がるだろうし、"
ロッキン・オン"も選ぶような気がする。各種メディアを眺めると、「ヒップホップってあんまり聴かないけど"
The College Dropout"はいいよね」という人はかなりいるようだ。繰り返すが、ヒップホップというジャンルにおいては、こういう状況はかなりすごいことだと思う。
10.そういえば去年はOutkastがそういう立場にいた。彼らの二枚組、"
Speakerboxxx / The Love Below"はヒップホップ雑誌では歴史的名盤と讃えられ、その他の音楽雑誌でも賞賛され、ファッション雑誌などでも取り上げられた。グラミー賞では最優秀アルバムにも選ばれたし、何より売れた。ただし"
The College Dropout"とは異なり、"
Speakerboxxx / The Love Below"は5枚目のアルバムだった。ヒップホップの「中の人」は遅くとも3枚目の"
Aquemini"くらいで「Outkastはすごい」ということに気付いていたはずだ。それから何年か経って、ようやく「外の人」が追い付いたという構図である。音楽というのはだいたいそういうもので、「外の人」が「すげぇ!」という頃には「中の人」は「何を今更」と言っている。あるいはJurassic5のメジャーデビュー作がそうであったように「外の人」が「すげぇ!」と言った時、「中の人」は「それくらいなら昔から他の人がやってたよ」と言うのである。
11.Kanye Westがすごいのは、デビューアルバムで「中の人」も「外の人」も「すげえ」と言わせたことである。もともと売れっこプロデューサーであったとしても、初めてプロデュースした作品がシングルカットされたのは、まだ2001年のことである(Jay-Z 'Izzo')。「中の人」は"
The College Dropout"を聴いて「ここまでやると思ってなかった」と思っただろう。そして同時にその作品は「外の人」に対しても、いきなり求心力を発揮するだけの力を持っていた。これはかなり稀なケースじゃないだろうか。
13.タイトルの自虐性につられて"
The College Dropout"を買ってしまった僕が(
2004/02/22)、一通り聴いた時に抱いた感想は「ここまでやると思ってなかった」だった。だから僕は、その時すでにある程度「すごいアルバムだ」とは思っていた。しかしブックレットに書かれたリリックを読んで、更に僕はぶっとんだ。やけに長いラスト曲'Last Call'に"
Do the fans want the feeling of A Tribe Called Quest / But all they got left is this guy called west"という一節があったからである。